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3) 希望の国のエクソダス by 村上龍

99/11/5

 今、文芸春秋に連載されている、村上龍最新作。まだ本になってない。なったらあらためて紹介します。
 村上春樹が数年前、デタッチメントからアタッチメントへ転換したと宣言し、ミーイズムの祖とも書かれた作風から、社会との接点を持つ方向へ考え方を変えた。オウム・サリン事件の被害者へのインタビューのみを綿々と綴った「アンダーグラウンド」がその現れだったりする。龍氏はこのことを大きく批判し、各プレスに書いた。具体的なことは思い出せないけど、「彼の方向で社会が変わるとは思えない。もっと別なやり方がある」といったことだったと記憶している (個人的には、僕は春樹氏の作風は根本的には全然変わってないと思うのだけど。彼の転換はあくまで彼のライフスタイルの問題であって、彼の世界観は今も揺るいでいないもの)。

 今回の作品は、春樹氏への反論を自ら行動に移したとも思える実験作である。昨年 (98年) 9月から連載開始、今月で14回目になる。設定は近未来の2001年。中学生がインターネットを駆使してオトナ社会を乗っ取ろうとする話。
 何がすごいかって、これは龍氏の「予言小説」なのである! 今の社会が2年後にどう変わるのか、政治、経済、教育、文化全てのフィールドを予測、それを下敷きに話が進む。まず驚く事実は、連載開始後1ヶ月、「学級崩壊」が話題となり、この小説の世界観が「成就」してしまったのだ! 現実社会を先取りし進んでいく小説・・・。すごすぎ。
 彼の他の「予言」は、円が外国の仕手集団に操作され国外流出する、自民新党・共生党 (ついに共産党も分裂!?) の誕生、そして子供たちのオトナ社会への反乱、などだ。緻密に社会を分析し、科学的に大胆に予測を立てている。かなり難解な専門用語のオンパレード (特に経済用語) だけど、それを理解する必要はない。でもそれを敢えて書き、専門家に挑戦しているともとれる。なんだかそんな方向に社会が進んでいるような気がしてくる。コワイけど楽しみだ。そして今月の11月号は、そのクライマックスともいえる、中学生のインターネット中継による国会質問のシーンだ。面白いよ〜。

 まあ小説になるとき、事実の訂正が行われるとは思うんだけど。2年後の社会予測をすることで今の社会に警鈴をならす、というのが彼流の「アタッチメント」だったわけだ。実に説得力がある。
 ドラッグ文化の「その後」(実体験) を描きデビューした「限りなく透明に近いブルー」は、僕の世代ではちょっと遅くて時代を共有できなかった。「だいじょうぶマイフレンド」は、コミカルな文体とマンガのような展開で「マトリックス」にも通じる管理社会の恐さを描き、やっと追いついた気分にさせられた。彼はそのどちらも映画化し、脚本・監督までやっている。最初からアタッチメントしているのだ。ひょっとするとこの小説も映画化の構想を練っているのかも・・・。今度はリアルタイムで最初からついていってるもんね。最後までちゃんと見極めさせていただきますぜ。お手並み拝見!


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