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ホロニック・プラチナムズによせて
〜ジェンダーの向こうへ〜
さいとういんこ
(リトル・エルニーニョ・レコード主宰、詩人)
なんだ。短いじゃん。20分とかの曲ないの?なんだ。ふつ〜じゃん。ふつ〜?どこが?魔法使い?ジャイアント?天使?ねえねえ。現実の世界はどこ?携帯とかインターネットとか、そういうのってどこ?21世紀なのに。中世?白夜の森って?ねえねえ。夢?幻想?現実逃避?。。。。。。。。どうすればいいの?ホロプラって王子様がやってるユニット?白タイツにふくらんだ半ズボン?フリルのブラウス?巻き毛?じゃあ、お姫さまは?乗り物は白い馬がひく馬車?
明石隼汰は、すぐに「プログレですね。」「彼はプログレですから。」「それこそプログレです。」と言う。ぜんぜんプログレじゃない私は「・・・・」ってなる。プログレッシブ・ロックとは1960年代の後半から70年代にかけて(パンク以前まで)流行したシンセサイザーなんかを多用して長くて大げさな演奏で壮大なテーマを歌うロックのことで。つまり構築とか、様式美なんだって。組曲とか多かったらしい。で、プログレ的な人というのも存在するらしい。たとえば物事を分類したり、識別したりするのが好きで得意だったり。パソコンのファイルも見事に整理されていたり。そして日常的に感動的だったり。そしてプログレ・ブームから20年近くを経て「穴」という名曲が生まれたわけで。
そして「穴」から数年たって明石隼汰が大田研司というパートナーを得て到達したものが、これホロプラ。新世紀のプログレは、短めで優しげ。そしてもともとのプログレが、一種の「男根的」もしくは「男子サークル的」なものであった(と、私には思われます。反論覚悟!)とすれば、今ここで聴くホロプラは、ついにジェンダーを越えたのだと。男根主義のかけらもなく。白いタイツにふくらんだ半ズボンの王子様は囚われのお姫さまを腕力や剣によってではなく、偉大なるスピリットで救い出す方法を知ったのだと。白夜の森は、みんなの心の中にあって、そこには魔法使いがいて。天使もいて。それは世紀が変わって時が流れても、ずっと同じだって。なるほど。なるほどね!わかったよ。えらいよ。
でもさ、やっぱ30分ぐらいある曲も入れて欲しかったなぁ・・・。ね?
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明石隼汰とホロニック・プラチナムズ
酒寄進一
(和光大学助教授、翻訳家)
ホロニック・プラチナムズの活動が本格的に始動した。
彼らのCDを聞いていて、ふとリッチー・ブラックモアのライブを一緒に聞きにいったときのことを思い出した。クイーンやイエスに心酔していた明石隼汰は、プログレッシブ・ロックの構築的な音楽性について熱く語っていた。
そんな彼自身のライブもプログレだった。
1988年、吉祥寺のライブハウスでやった "The Human History" は天地創造からハルマゲドンに至る人類のタイム・テーブルに1曲1曲を当てはめた壮大な組曲仕立てだった。今回収録された「君の手をつかんで」はそのときの曲。
1989年から始まる "Fantasy Pop" で展開された一種の本歌取りもまたプログレの得意とするところ。マーラーの交響曲『巨人』をモチーフにした「孤独なジャイアント」、W. ヴェンダースの『ベルリン・天使の詩』へのオマージュといえる「天使の詩」など、本歌の大きな物語を凝縮させた歌詞とメロディは当時から気に入っていた。
今回、ホロニック・プラチナムズとしてリメイクされたそれらの曲を聴いていると、一曲一曲がじんと胸にしみてくる。明石隼汰がバンド名に "holonic(ホロン的)" という言葉を冠したのはなかなか言い得て妙だ。壮大な伽藍を組み上げるための部材だった一曲一曲が、今回はアルバムという全体の一部でありながら、小さな全体としてもちゃんと進化しているからだ。まるで限りなく質量から解放されたニューロンのような音がぼくの耳をくすぐる。今回の聞きどころは、曲作り以上に音作りにあると、ぼくはみた。
明石隼汰はあきらかにターニングポイントを通過したようだ。
そのターニングポイントはどのあたりにあったのだろう?
1994年、ぼくとぼくのゼミ生が再建に関わった「自然舎」(じねんしゃ:明治時代の舞台を山梨の山奥に移築したオープンシアター)の活動に賛同して、ほぼ毎年繰り返されているライブ?そこにはプログレ以前の、ウッドストック的な祭りの空間があった。
それとも1998年の「穴」のリリース?彼は外部にある大きな物語ではなく、自分の原点に物語を求めるようになった。
それとも1999年、作家・寮美千子とのコラボレーションを始めとするポエトリーリーディングの活動?言葉と音の容赦ないバトルで、彼のピアノの音は一段と磨きがかかった。
これらぼくがかいま見た彼の試行錯誤は、まちがいなく彼の一部であり、同時にそれぞれが進化途中の全体でもあった。
だがそのあいだも、彼の青の時代はずっと続いていた。衣装から家財道具までマニアックなまでに青で飾り立てる彼。その前には赤の時代があったと聞いているが、彼にとって特定の色で身を固めるのは、外部へのなんらかのポーズであり、同時に一種の防波堤なのだろう。ここ数年の彼の活動を見てきて、そろそろ青の時代は終わり、別の色の時代が到来するのではないかとぼくは思っていた。
それはいい意味で予想を外されたといえる。彼は外殻を塗り替えるのではなく、その内部を硬質なプラチナにメタモルフォーゼしたと宣言したからだ。白金に輝く彼は、いったい何色に見えることだろう。いや、聞く人によって、さまざまな色に見えることを狙っているのかもしれない。
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ホロニック・プラチナムズ
炎氷
(詩人)
一粒一粒の音が輝き
その織り成す旋律は
銀白色の高原へと誘う
電子音の装飾を脱ぎ捨て
声音の響きと無声の深さへ
この身体を預ければ
一音の詩は増幅せぬとも
夢想への橋渡しとなり
浮遊の感覚を呼び起こす
全知全能に憧れながらも
世界の一部分に過ぎない
その苛立ちが醜いとは限らず
抑制の加減次第で
結晶の純度が定まろう
多彩な迷いは既に消え
多重なリズムを遣り過ごし
指先が鍵盤の上で踊り出す
白い歌声に付かず離れない
黒子の足音に支えられ
見えない滴は霧氷へと実を結ぶ
既視感に染まらず
不純な彫刻へと終わらない
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